愛知工科大学 工学部

カワハギ節考

自動車工業学科 准教授 掛布知仁/KAKENO Tomohito

掛布研究室サイト

カワハギ節考 ~その恐るべき魔力に注意!~


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これが憎くき奴の全貌。なんとも愛嬌のある体系ではあるが、性格は極悪と見た。

人間、長く生きていると嫌な奴の一人や二人はいるものである。ましてやちょっとそいつが愛想が良かったり、時としてこちらに迎合したりするのは一番たちが悪い。今回はそんな奴の話。名を「カワハギ」という。 分類はフグ目カワハギ科で、きわめて美味、どんな料理にもベストマッチの魚だ。「魚は魚臭くていや!」という人には一度カワハギの体臭(?)を嗅いでみるとよい。実は皮はざらざらとした厚い皮で、手で簡単に剥くことができ、厚さも手触りも全く紙やすりのそれと酷似する。もちろん魚特有のヌメリもないので臭みもまったくと言ってよいほどないのである。



体長は大きくても25cmぐらいで平べったい形をしている。大きさもまな板やお皿にちょうど乗る大きさだ。実はこれは大切なことで、家族で食べられる量をはるかに上回る大きな魚が手に入った時、調理器具の種類や大きさ、または台所の大きさなどで料理のレパートリーが決まってしまうことも多々ある。そういう面ではカワハギは料理する人にやさしい魚ともいえる。身は上品な白身で、料理は薄造りから煮付け、鍋のネタにとどまらず、カルパッチョからポワレ、ムニエルまでなんでもござれである。また、カワハギといえば肝のうまさに止めを刺すと言ってもよい。カワハギは冬前になると肝に栄養分をしこたまため込むのででっぷりとした肝が取れるようになる。魚の肝といえばアンキモが有名であるが、カワハギの肝はアンキモよりも上品でまろやかであり、個人的には断然、カワハギ肝に一票!なのである。


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皮は簡単に手で剥ける。これが「カワハギ」の名の由来。ウロコ・ヌメリは全くなし。台所も汚れず、後片付けも楽々! おなかのあたりに旨そうな肌色の肝が透けている。



さて、料理屋などでカワハギの肝と薄作りなどを頼めばビックリするぐらいのお勘定になってしまうので、釣り人の考えとしては、「うまい魚を食べるためには釣っちゃえばいい」という思考回路が簡単につながるのである。毎秋、海水の温度が下がり始めるのと反比例してカワハギフリーク達の熱は上昇し始める。カワハギフリークとは、ただでさえ熱狂的要素を持つ釣りのジャンルの中でも最近、注目度ナンバー1の「カワハギ」に心を奪われた哀れな人(私も含めて)達のことである。実はこの釣りはゲーム性が高く、釣るための色々な攻略法が存在する。というのもカワハギは写真でご覧の通り、口がおちょぼ口で大変小さい。


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カワハギの雄雌を見分けるのはとても簡単。写真のように背びれが長いのがオス。ちなみに雄雌の違いで味に違いはない。・・・多分。


しかし、この口の中には頑丈で硬い歯が並んでおり、餌をかじりとることができる。普通の魚は餌を吸い込んで食べるので、この時の力が竿や糸に伝わり「アタリ」となる。しかし、カワハギの場合、餌をかじりとって食べるので、アタリが分かりにくいのである。この分かりにくいアタリをいかにして感じるか、かじらせずに吸い込ませるか、が釣技の工夫のしどころである。また、カワハギ攻略法のパターンは1日の中でもめまぐるしく変化していき、どれだけその変化に対応できたかが釣果を分ける。実際、先日も経験してしまったのだが、自分の両サイドは「魚が見えて」(その日の釣りパターンが分かって、たくさん釣ることが出来ること)おり、良型のカワハギを連発する中、自分だけは全く当たりすらない、ということがある。ヒミツの仕掛けや餌を使っている気配もなし。竿もリールも大差ない、誘いもそんなに変わらない、なのに釣れない、当たらない、掛らない、のである。こんな時は、カワハギのあの間抜けた面が余計に腹立たしく思えてしまう。このように本当に微妙な針の大きさの変化や、ハリス(針を結ぶ糸)の長さのmm単位の違いによって差が歴然と表れるのがカワハギ釣りなのである。結果、道具にハマり、仕掛けにハマり、餌にハマり、底なしのカワハギ地獄にやんわりと、しかし力強くからめとられていくのである。


ここで先日の釣行の件を一つ。11月某日、その日は曇り、風もなく波もなく潮もあまり早くなく絶好の日和。師崎で船釣りをする場合はいつも「七福丸さん」を使用している。船長さんをはじめ、奥さん、お母さん、スタッフの皆さんの人柄も良く、対応も丁寧でいつも楽しく釣行させてもらっている。この日も早朝3時起床で船宿に向かい、安全運転にて師崎に到着したのが4時半。出船2時間前であるが、すでに駐車場が8分通り埋まっている。皆、気合が入りまくりである。いつもの乗船手続きをし、7時に出船。否が応でも気持は盛り上がる。自分の釣り座をセットし、カワハギ攻略法のパターンをアアデアロウカ、コウデアロウカと頭の中で繰り返す。カワハギのポイントは師崎港からそんなに遠くなく、およそ15分程度で到着する。いよいよポイントについて投入開始の合図。皆が思いを込めた仕掛けと餌を投入。カワハギは動くものに興味を持って集まってくる魚なので、投入した仕掛けは「誘い」と称する動作で魚をおびき寄せて食わせるタイミングを作る。元気なカワハギが沢山いる時などは、仕掛けを投入して何もせずに放っておくと、30秒ほどであっという間に餌をとっていってしまうという離れ業を簡単にこなしてしまう。難敵相手の戦いが始まったのである。そうこうするうち、同列3人隣りの人が本命のカワハギを掛ける。そしてすぐ隣も掛ける。順番でいったら次は私の番である。が、私を飛ばして次の人が掛けた。あらら、まあそんなこともあるわい、などと思っていたら、次の回も、その次の回も「私飛ばし」。あらら、が あれれ、に変わって、むむむ、になり、くくく、になり最後は、はあ~のため息のみである。
結果、惨敗、完敗、大負け、どんな表現を使っても言い表わせられないくらいの負けである。カワハギに負け、同船者に負け、自分に負け、茫然としていたところ、最終終了10分前に約50cmの真コチが釣れた。これでなんとか食材は確保したものの、本命は20cm超のカワハギ1枚のみに終わった。失意のどん底ですする沖上がりのお茶の苦かったこと。


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いつもお世話になっている七福丸さんで出船準備。暗い港で明かりのついた船に乗り込むと、あたかも自分が漁師になったような錯覚を覚える。


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準備万端いざポイントへ!カワハギフリーク達の熱い戦いが始まろうとしている。気温10度、ワクワク感を鎮めるにはちょうど良い温度。


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船釣りにしては意外と軽めの竿を使用する。荷物は出来るだけまとめておく。


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今回の餌はウタセエビを細かく切ったものやアサリなど。一度に全部出さずに、写真のように小分けして使う分だけ出すと餌も乾かなくてよい。

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先生!カワハギ釣ってよ、カワハギ! 船長さんの声が聞こえてきそう。外道で釣れたカレイとヒガンフグ。



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沖上がり後には温かいおしぼり、温かいお茶、出来たてのはんぺん、ちくわ、きゅうりの漬物などが並ぶ。疲れた体にはこれが美味!


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フグが釣れたら、このように番号札つきのバケツに入れる。七福丸さんではフグ免許を持っているので食べられる状態に調理してもらえる。


釣れた魚はその日のうちに食べてしまうのが魚釣りのだいご味だ。私は魚釣りも好きだが料理も大好きである。新鮮な食材を見て腕は鳴るのだが、いかんせん朝が早いので眠い眠い。目をゴシゴシこすりながらの調理である。家族全員、白身魚の刺身が好きなので、カワハギの肝も取れることだし、薄造り三種盛りとしてみた。まずはカワハギの皮をはぐ。11月で気温がぐっと下がると、肝はぐっと太る。今回も写真のようにまるまるとした肝をゲットした。あとは薄作りを作るだけ、でもアー眠い。ビールはもう少し後だ、頂上は近いぞ!いやもう駄目だ、何を言っている!何のためにここまで頑張ったんだ!風呂上りに肝和えでビールを飲むと決心したじゃないか。こらえろ、そうだ包丁を動かせ!一枚ずつだ、もっと薄くだ、いいぞ、その調子だ!などと馬鹿な一人芝居をしながら薄造り仕上げる。その後、ゆっくりと風呂に入り、家族で食事。いただきますの後、あれだけ時間をかけた刺身がみるみるなくなっていく。相変わらず白身の刺身は人気が高い。私もビールをうぐうぐ飲みながら肝和えをパクリ。んーやっぱりうまい。幸せの一時を楽しんだ。やっぱりいいなあ。うまい肴で酒を飲むのは・・・。あれ、カワハギもうないの?だって一皿しかなかったんだもん・・・。 次回はみんながおなかいっぱい食べられるようにもっと釣ってきます! 自分の腕の悪さを恨んで「怨み節」 いつかはがつんと「大漁節」 これがホントの「カワハギ節」 こうしてますますカワハギ地獄へはまっていく。


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こちらが取りたてのカワハギの肝。熱湯を優しく掛け回して臭みを取る。優しく扱わないと崩れてしまう。後は裏ごしするだけ。

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裏ごし完了。これに醤油、白だし、ポン酢などをお好みで合わせる。今回は貧漁ゆえ、一人分はこれだけ!



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カワハギの薄造りでござい。薄造りはお皿の模様が見えるように薄く切るらしいが、シロートではこれが限界。


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カワハギの薄造りとフグの薄作りを並べてみたが、どちらがどちらか分かるだろうか? 正解は右がカワハギ、左がヒガンフグ。ヒガンフグの方がやや白っぽいのが分かる。


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こちらは真コチの薄造り。体長50cmだとさすがに大皿いっぱいに。


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