機械システム工学科 荒川研究室

データで、安全な未来を導き出す

統計学を用いて様々なデータから危険を予測。安全な社会を実現するため、未来を予測し、社会に貢献する研究を行っています。

交通事故(死亡事故)の原因として、最も多いのは「漫然運転」。つまり「特に危険を意識せず、ぼーっと集中力を欠いた状態」での運転です。
明らかに危険な運転をしているより、一見普通に運転している時の方が事故を起こしやすいのです。
それはなぜか?という疑問を、統計学を使ってデータを解析することで解決できます。
荒川研究室では、分析結果を用い、自動運転システムへの転用や電力需給量などを予測して省エネにつなげるなど、社会に貢献する研究を行っています。

予測するチカラが、社会を導く

テーマ1:自動運転に向けたドライバー状態の検出・推定・制御の研究

本研究室では、統計学を使い、データを解析し、社会に役立てる研究を行っています。
下表にあるように、交通事故(死亡事故)の最も多い理由が漫然運転です。「考え事をしていて、前方を見ていても気がそれてしまっている」状態や、「ぼーっと運転していた」という状態。注意が散漫になった状態の運転時に一番事故が起こりやすいのです。
漫然運転はドライバーならだれでも経験があるのではないでしょうか。これまでは、運良く事故が起きなかっただけなのです。
また、ドライバーが運転中に意識を失ったり、発作・急病で大事故になったりするケースもあります。自分が運転する場合だけでなく、バスやタクシーを利用したり、友人・知人の車に乗ったりすることを考えると、他人ごとではありません。
本研究室では、このような事故を防ぐため、「ドライバー状態の検出・推定・制御の研究」を行っています。ドライバーの目の動き(眼球運動)をアイマークレコーダで捉え、目の動きのばらつき方から漫然状態を検出したり、血圧の上昇を見て緊張した状態であるかを判定したりするなど、運転中の生体情報(眼球運動、心拍、脳波、血圧など)を検出・解析し、運転に適している状態か否かを判定し、最適な状態を導き出します。この研究は、これからの自動運転時代にも貢献できる研究で、例えば、ドライバーが運転に適していなければ、自動運転に切り替えるための判断基準作りにもなり得ると考えています。
最近はドライバー自身が運転している場合と完全自動運転の場合で、ドライバー状態にどのような差があるかを、生体情報の観点から検証するという研究も行っています。

原付以上運転者の死亡事故理由トップ3

ドライバー状態検出・推定・制御の研究
ステアリング装着型連続血圧計

ハンドルの握る部分についているセンサが脈拍を検出し、変換することで血圧を推定する「ステアリング装着型連続血圧計」。
運転中の血圧を測定できるので、長距離運転手の健康管理や状態推定に役立ちます。

血圧測定についての記事

荒川俊也准教授らが開発した連続血圧計測システムが中日新聞に掲載されました。
平成27年3月24日 中日新聞掲載(この掲載は、中日新聞の許可を得ています)

産業応用工学会2014年度論文賞

投稿論文が「産業応用工学会2014年度論文賞」を受賞。


テーマ2:動物(マウス、シバヤギ)の行動自動推定の研究

動物が互いに関心を持っているかどうかを判別するためには、動物の行動を時間をかけて観察し、熟練した科学者による解析が必要でした。
しかし、この方法では時間も労力もかかります。たとえば、マウスの行動を観察した3分間の動画を解析するのに30分以上もかかってしまうのです。
そこで、観察動画をコンピュータに読み込ませ、動物の行動を自動的に解析するソフト「DuoMouse(デュオマウス)」を、国立遺伝学研究所、政策研究大学院大学、統計数理研究所等と共同で研究し開発しました。マウスの行動を数多く自動解析することにより、大型動物の行動解析に関する基礎研究の進捗や、自閉症などの社会性疾患に影響する遺伝子の発見につながることが期待されます。
このソフトを大型動物にも適用できないかと考え、シバヤギを定点観測し、ヤギが発情期に入ったことを自動で検出する研究も行っています。これは、発情期前に夜通しヤギを監視していた農家の方の負担軽減にもつながります。

Duomouse(デュオマウス)

マウスの動きを自動的にトラッキングして、データを基にマウスがどんな行動をしているか自動的に判定するソフト「DuoMouse(デュオマウス)」。世界ではじめて、フリーソフトとして開発・公開されており、マウスの行動解析を行う世界中の研究者に使われています。

行動解析ソフト開発についての記事

平成26年5月28日付 中日新聞掲載
(この掲載は、中日新聞社の許可を得ています)


テーマ3:地理情報システムのインフラ管理への活用

地理情報システム(GIS: Geographic Information System)とは、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持った空間データを総合的に管理・加工し、コンピュータ上に視覚的に表示することで、分析や判断を迅速化する技術です(国土地理院ホームページより引用)。このGISを活用して、最適なインフラ管理の方策(保守点検や撤去可否などの意思決定・戦略)を導き出すための研究を進めています。

この研究の目指す所は?

世界中にある大量の記録や様々なデータを活用し、社会に貢献することを目指しています。
今はビッグデータの時代といわれていますが、ただデータを集めるだけでは役に立ちません。そこから、何が重要で何が重要でないかを見極めて解析を行うことで、役に立つデータを抽出します。いかに効率よく、効果的に解析するかが重要です。
研究結果が、自動車の自動走行システムなど、実際に製品・サービスとなり、社会に大きな利益をもたらすことが、この研究の最大の目的といえます。研究のための研究で終わらせないため、実践的な研究をモットーとしています。
企業との共同研究も積極的に進めており、研究成果を社会に還元できるように努めています。

学生へのメッセージ

若い頃は何をやりたいか、なかなか決まらないと思います。私の場合は、前職の企業で人間工学の研究を担当したことがきっかけで、今の研究に行き着きました。社会人ドクター時代に得た経験から統計科学も研究領域になりましたし、師と仰ぐ先生にも出会えました。
企業に就職したこと、社会人ドクターの経験の両方がきっかけとなって、AUT の教員・研究者という立場に至っています。何がきっかけで自分の進む道が決まるか、誰も予想できません。
AUTでチャレンジングスピリッツを存分に発揮し、たくさんの教員や学生との交流を通じてチャンスをつかみ、将来の夢へのきっかけをつくってほしいと思います。

荒川 俊也 教授(博士(学術)) プロフィール

荒川先生

荒川 俊也 教授(博士(学術))
工学部 機械システム工学科

専門

人間工学、ヒューマンインターフェース、統計科学

経歴

2003年4月~
富士重工業株式会社 スバル技術研究所(~ 2013年2月)、兼 情報・システム研究機構 統計数理研究所 数理・推論研究系 外来研究員(2012年10月~ 2013年3月)
2013年3月~
政策研究大学院大学 契約職員
2013年4月~
愛知工科大学 工学部 機械システム工学科 准教授、兼 情報・システム研究機構 融合プロジェクト「超大容量ゲノム・多元軸表現型データの統計情報解析による遺伝機能システム学」共同研究員
2016年4月~
愛知工科大学 工学部 機械システム工学科 教授(大学院 工学研究科 教授 兼担)
2017年4月~
政策研究大学院大学 政策研究センター 客員研究員

受賞歴

産業応用工学会全国大会2014優秀論文発表賞 / 産業応用工学会2014年度論文賞 / 産業応用工学会全国大会2016優秀論文発表賞 / 計測自動制御学会 システム・情報部門 学術講演会2016 研究奨励賞(同一講演会で2件同時受賞)

好きなこと

実は競馬観戦が大好きで、10 年かかって日本に存在する競馬場を全場踏破しました(笑)。
今は海外の競馬場の踏破が密かな楽しみで、ライフワークになっています。これまでに香港、マカオ、オランダ、マレーシアの競馬場に行きました。それ以外には、ドライブがてら温泉巡りや博物館、美術館、寺社仏閣巡り、ご当地グルメの堪能、アニメソングの鑑賞など、手広くやっています。
あと、レトロゲームの大のマニアで、未だに20 年以上前のファミコンのゲームに夢中になっています(笑)。

研究のやりがい

私の研究はどちらかというと裏方的で、華やかさのない研究に見えるかもしれません。しかし、研究成果が実際に製品、サービスに使われたり、他の研究者が研究結果をさらに発展させてくれたり、政策提言につながったりすることで社会が大きく変わる可能性を秘めています。
また、学会発表や論文を通じて成果をいち早く公表するようにしていますが、このように地道に研究を続け、成果を公表することによって、少しずつですが、何らかの形で世の中の技術や研究者の意識を変え、科学技術の発展、ひいては社会の発展に貢献できるものと自負しています。
このモチベーションが研究のやりがいにつながっていると考えています。

研究室で身につくこと

研究室では「人に頼らず、自分でひたすら考える」「研究室のメンバーと議論を重ねて研究をブラッシュアップさせる」「PDCA を円滑に回す」などの人材育成をモットーとしています。学生には企業との共同研究にも積極的に参加してもらい、「企業が求める人材」が育つ実践的な環境をつくっています。
自主性を大切にしていますので、とにかく自由です。私自身は、学生の目標設定の修正や研究の進め方の軌道修正程度しか口を出しません。その自由な環境の中で、自分で目標設定をし、しっかり考えて行動するという自己管理能力を高めてもらいます。
自由には苦労がつきものですが、苦労の分だけ、困難に対してへこたれずに立ち向かえる能力が身につきます。その力は社会に出た後でも十分に通用するものだと自負しています。

今後の夢

まだ研究成果が実際のプロダクトに活用されていませんが、自分や学生の研究成果が、実際にモノとして具現化して商品に搭載されればうれしいですね。
研究を行うこと自体は非常に重要ですが、研究を研究だけで終わらせるのでなく、何らかの形で世の中に商品として現れ、多くの人に使ってもらって人々の豊かさに少しでも寄与できたら最高だと思います。



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