トピックス(人工衛星の開発)
学生たちの夢を乗せて、人口衛星、金星へ!

プロジェクト概要
学生の手で人工衛星をつくる!前代未聞のプロジェクトがはじまった。

学生でありながら宇宙開発に携わる。教室でつくった人工衛星を、本当に宇宙へと飛ばしてしまう。そんな夢をかなえてしまったのが、AUTの奥山研究室で学ぶ学生たちです。実は、日本は大学の宇宙活動に関しては世界をリードするフロントランナー。その中心となっているのが、「大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)」という、大学・高等専門学校の学生による手づくり衛星やロケットなどの実践的な宇宙工学活動を支援することを目的としたNPOです。AUTは中部圏の大学では唯一、このコンソーシアムに参加。世界ではじめて、学生がつくった人工衛星を地球重力をほぼ無視できる「深宇宙」へ飛行させるというチャンスをつかんだのです。
深宇宙探査機「UNITEC-1」の開発プロジェクトには、北は北海道から南は九州まで、全国20大学・高等専門学校が参加。AUTでは、衛星の外面と内面を形成する構造パネルと、打ちだされる際に方向をコントロールする棒状の部品「ガイドポール」の設計を担当しました。それらの素材には、航空宇宙産業で多く用いられる「超超ジュラルミン」や「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」を採用。製品化には、航空機部品など特殊なジュラルミン加工技術を得意とする地元の蒲郡製作所に依頼しました。なぜなら、AUTがある東海地域は、日本の航空機生産額の50%以上を占める一大生産拠点。自動車産業で培われた高度な「ものづくり」の技術は、すでに大空への夢を現実のものとしていたのです。
「深宇宙」って何だ!?それは想像力の冒険だった。
学生たちが開発に取り組んだ深宇宙探査機「UNITEC-1」が飛びたつのは、「深宇宙」という空間です。深宇宙とは、地球の重力をほぼ無視できる宇宙のこと。そこでは、過酷な環境への対応が要求されます。しかし、今回のプロジェクトのコンセプトは、「低コスト・高性能」。いかに経費をかけずに性能を高められるかが求められているのです。打ちあげ時の振動や、宇宙空間と太陽近くの温度差に耐える構造を、どう実現するか。放射線の強い深宇宙の環境で、衛星に搭載したコンピュータがどれだけ耐えられるのか。深宇宙から来る非常に微弱な電波を、私たちは地球上で受信できるのか…。AUTならではの「ものづくり」マインドを大いに発揮できるプロジェクトといえるでしょう。
完成した「UNITEC-1」は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2010年5月に種子島宇宙センターから打ちあげる金星探査機「あかつき」(PLANET-C)に相乗りして打ちあげられます。そして、惑星空間を飛行できる秒速約11kmの第2宇宙速度まで加速した後、「あかつき」と「UNITEC-1」はロケットから分離して、それぞれ別々に金星へ向かう軌道に投入され、周回する衛星となる予定です。このプロジェクトが成功したそのときには今後さらに大学発の宇宙開発が加速する可能性があると期待されています。もちろんそのときには一回り大きく成長した学生たちの姿があるはず。そして先輩たちが宇宙へ放った夢の種を、より大きな夢へと育てはじめたあなたの姿も、このAUTキャンパスにあるはずです。

先端企業の技術者の実力。あこがれは、やがて連帯感に。

2009年4月。宇宙を夢みて奥山研究室に集まった学生たちに与えられた時間は、驚くほど短いものでした。秋には試験用のエンジニアリングモデルを、12月には宇宙へいくフライトモデルを完成させなければならなかったのです。しかも、日本全国の学生たちとのチームプレー。搭載機器を担当する他大学の学生からは、「サイズを変更した」「コネクタをつなぐ穴を空けてほしい」などの注文が毎日のように入ります。変更につぐ変更。授業では多くのCAD設計をこなしてきた学生たちも、実際の「ものづくり」に直結する設計ははじめての経験です。やっと完成させたエンジニアリングモデルを九州で振動試験にかけると不具合が発生。急きょ大学に持ち帰って3日で図面を書きあげ、蒲郡製作所さんに頼み込んで1日で仕上げてもらった部品を持って、最終の新幹線に飛び乗ったこともありました。そんな学生たちも、冬がきてフライトモデルを完成させる頃には、思い通りの設計ができる力を身につけ、数々のテストを難なくクリア。2010年5月の種子島宇宙センターでの打ちあげには、学生も取りつけ作業に加わります。この一年で大きく成長した学生たちの手が、あこがれの宇宙に届く日はすぐそこです。
プロジェクト参加学生の声
浅倉 秀紀さん(「構造パネル」の設計を担当)
搭載機器が最大限の機能を発揮できるような配置を実現するため、機器の仕様が変更されるたびに設計を変更するのが大変でした。しかも、実際に組み立てるとネジ穴があわなかったり、振動試験でゆるんだり。「ものづくり」の厳しさを実感しました。ここで学んだことを、これからは仕事に役立てたいです。

鷲野 友彦さん(「ガイドポール」の設計を担当)
衛星を金星へと導く「ガイドポール」は、最小限の部品点数で強度を保たなければなりません。最初につくったモデルは、九州で試験をしたら曲がってしまい、急きょ大学に持ち帰って設計を変更し、蒲郡製作所さんに再発注。納期が迫るなかで失敗を挽回したことで、技術的にも精神的にも成長できたと思います。

白川 伸幸さん(「太陽電池パネル」の加工を担当)
開発コンセプトのひとつが「低コスト」だったので、ほかの衛星に用いられた太陽電池パネルを譲り受けてリサイクルしたのですが、UNITEC-1の仕様にあわせて加工するのが大変でした。他大学で電気系を担当する方と話しあいながらベストな加工が実現できたことは、自分にとって大きな自信となりました。

UNITEC-1のスペックとミッション

AUTを含む国内20大学・高等専門学校が所属する「大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)」が開発する深宇宙探査機。一辺35cmの立方体で、重さ約20kg。内部に通信装置、制御装置などのコンピュータ回路を搭載し、深宇宙での動作を検証します。
| サイズ | 35cm立方 |
|---|---|
| 質量 | 約20kg |
| 平均発電量 | 25W程度 |
| 姿勢制御 | なし(タンブリング) |
| 送信電力 | 9.6W、5.8GHz(Cバンド)アマチュアバンド |
学内にø3mのアンテナを設置。UNITEC-1から送信される微弱な電波の受信を目指します。
