次世代自動車システム研究所

安全でストレスのない車社会の実現へ

愛知工科大学で2008年に設立された高度交通システム(ITS:Intelligent Transport System)研究所は、道路交通が抱える様々な課題をセンシング・通信・情報処理技術を用いた交通システムで解決することを目指し、研究に取り組んできました。

2021年4月、愛知工科大学山高正烈教授に所長を引き継ぎ、次世代自動車システム研究所に改名。自動車の運転は人間が行うことから、交通工学や情報工学に止まらず実験心理学や生体計測等の人間工学まで含む多分野を結び、事故発生を未然に防ぐための研究を展開していきます。特に近年、大きな社会問題になっている「あおり運転」に着目し、「あおり運転」と認識されやすい運転挙動や車間距離等を分析。安全性の追求のみならず、運転する人間の心理まで考慮して、事故につながる危険な「あおり運転」を撲滅し、ストレスのない車社会の実現を目指しています。

「あおり運転」の研究から人間の特徴を知る

自動運転技術が発展しても、車の究極の操縦者は人間です。「あおり運転」のほとんどが「あおる側」と「あおられる側」の誤解や勘違いによって生じるのでは、というのが同研究所の着眼点。両者の心理特性と運転挙動の特性を考慮した対策を講じることが、あおり運転の効果的な抑制につながると考えています。

この研究は2020年度に公益財団法人三井住友海上福祉財団研究助成に採択、2021年度には日本学術振興会科学研究費助成事業「基盤研究C」に採択され、本格的に研究開発を進める環境も整備中。どういった運転が「あおり運転」と認識されやすいのかをデータとして分析するため、ドライビングシミュレータに様々なシナリオを設計して実験を進めていきます。

現在、「あおり運転」に具体的なスピードや車間距離の定義はありません。今後の同研究所の研究結果を、未来の自動運転技術や人にやさしいシステム作りに活かしていくことが期待されます。

多様性に富む人材と大型設備が充実

同研究所には企業出身者、大学経験者など様々なバックグラウンドを持つメンバーが集結。専門分野も人間工学、バーチャルリアリティ、データサイエンス、ネットワーク技術、ロボット制御等多岐に渡り、多様な知識を融合して新しい分野を切り拓く環境がそろっています。実験設備も充実しており、東海地区で2番目の規模となるドライビングシミュレータは、大型スクリーンでリアリティのあるシミュレーションが可能。リアルタイム3次元動作解析システム(モーションキャプチャ)も導入されています。

主な研究内容

運転行動・心理状態の共有による「あおり運転」の効果的抑制システムの開発

2017年6月に東名高速道路で起きたあおり運転による事故をきっかけに「あおり運転」に対する社会的関心が高まり、2020年6月には「妨害運転罪」が定められ厳罰化の動きに繋がりました。しかし,日本自動車連盟(JAF)が行った交通マナーに関するアンケート調査によると、今でもなお約半数以上の人があおられた経験があると答えている等「あおり運転」は依然頻発しており、大きな社会問題となっています。

あおり運転の発生には、「あおる」側はもとより「あおられる」側にも問題の起因となる運転行動が潜んでおり、両者の運転行動や心理状態といったドライバの特徴に着目した対策を講じることが、あおり運転の発生と拡大を未然に防ぐことにつながると考えています。
このような観点に基づき、あおり運転を効率よく検知・判断することが可能な「あおり運転深層学習センシングモデル」と、自他の運転行動や心理状態の共有、およびドライバの心理的安静化を促す「共有型運転行動・心理フィードバックモデル」を提案・構築し、あおり運転の撲滅を目指して研究を進めています。

近距離無線技術を用いた交通安全支援システムの開発

交通事故の約3割は交差点での出合い頭の衝突によるものと言われています。そのうち4割は、信号機のない中小規模の交差点で起きています。本当に危険な中小規模の交差点には、コンパクトで低消費電力のシステムが必要とされています。
そこで、近距離無線を用いた交通安全支援システムの構築を目指し、道路には管制機と路側機を設置、車両には車載機、歩行者にはICタグやスマートフォンを携帯してもらい、他車接近を通知するシステムを開発しました。現在、アイチシステム株式会社(愛知県豊田市)と共同で、マイクロ波センサーを交差点に設置し、移動体の検出をLEDによりドライバに知らせる「交差点安全支援システム」の開発を進めています。

人間工学、感性工学的手法に基づく操舵感変化の生理・心理学的測定

ドライバの運転時の負担軽減や安全性の向上だけでなく、走る楽しさ、運転の楽しさを追求し、ドライバの身体・心理状態に適応して、「楽しさ」や「ワクワク感」を惹起する操舵反力の提示を目指しています。
そのために、操舵反力の提示が可能なドライビングシミュレータで脳波および心電位信号等の生体信号を計測し、感情モデルに基づく操舵感の評価方法の構築、およびドライバの感情推定に関する研究を進めています。

次世代自動車システム研究所 所長

山高 正烈 准教授(情報メディア学科)

 

研究分野

バーチャルリアリティー/ヒューマンインタフェース/多感覚情報処理/交通安全ヒューマンファクター

 

経歴

2019年6月 – 現在愛知工科大学 准教授
2015年11月 – 2019年5月東北大学電気通信研究所先端音情報システム研究分野 助教
2009年10月 – 2015年10月東北大学電気通信研究所先端音情報システム研究分野 産学官連携研究員
2006年4月 – 2009年3月九州大学ユーザーサイエンス機構 学術研究員
2004年4月 – 2006年3月九州大学大学院システム情報科学研究院知能システム学部門 COE研究員