本研究室では、あらゆる情報通信システムの究極的な情報の担い手が「人間」である視点から、ヒトの知覚情報処理メカニズムを考慮したヒューマンコミュニケーションの研究を行っている。例えば、高臨場感VRシステムを構築するためには、振動の提示がきわめて有効である。しかし、振動の入手は複雑で専門知識を必要とする。そこで、今やスマートフォンさえあれば誰でも手軽に入手可能な視聴覚情報から、本物の振動と同程度の効果をもたらす振動の開発に取り組んでいる。また、災害時に避難を促す既存のアナウンスでは、「正常性バイアス」と呼ばれる人間の心理特性が働いて逃げ遅れる悲劇が報告されている。そこで、人間の深層心理に働きかけ、聞くたびに動きたくなるような新しい避難勧告アナウンスの開発を行っている。さらに、耳には聞こえない20Hz以下の音(インフラサウンド)を利用して、地震や津波の発生を感知する災害センサの開発も手がけている。近年は、大きな社会問題となっている「あおり運転」をテーマとして取り上げ、ドライバの運転挙動と心理・認知特性を考慮した「あおり運転」の撲滅を目指した研究に注力している。