先輩たちの活躍 VOL.01

VR CREATIVE AWARD 2019 優秀賞(学生部門)受賞。

情報メディア学科

平川 俊貴さん(愛知県 国府高等学校出身)

人工的な現実でも
危機感を持つことは可能

「VR」とは、「Virtual Reality=人工現実感」のこと。CGなどでつくられた人工の空間に自分が入り込んだような、リアルな疑似体験ができる。平川俊貴さんは2019年8月、VRクリエイティブアワードを受賞。彼が開発したのは、VRで地震を体験できるコンテンツ。気象庁の波形データを用いることで、1995年兵庫県南部地震や2011年東北地方太平洋沖地震など、さまざまな地震の比較体験が可能だ。1年生の時からVRやAR(「Augmented Reality=拡張現実」)を用いたアプリ開発に興味を持っていた平川さん。「実際に映像で揺らすのは壁と床だけです。机やイスなどは物理エンジン(現実では不可能なことも再現できるプログラム)を使って自動的に倒れるようにしています」気象庁の地震データには地震の加速度があるが、映像化するために加速度を積分することで速度を求めている。データにもノイズがあり、そのノイズを除去できるかが映像のクオリティの鍵だ。こうしてつくられた映像は、“体験する災害”として中学校の防災訓練でも活用されている。「中学生にこのVRを体験してもらったところ『怖い』とか『恐ろしい』といった感想が聞かれました。実際の地震の恐ろしさを効果的に伝えられていると思います」

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“体験する災害”から
防災意識の向上へ

受賞後は、地震を“直感的に疑似体験する”コンテンツの開発にも力を入れている。ゴーグル装着者が体を動かすとVR映像も同時に動き、地震で揺れる床の上を歩く感覚を味わうことも可能になった。また、ARによる煙体験のシミュレーションもある。現実風景の映像に煙のCGを合成させることで、煙が充満している部屋からどのように脱出するかという体験までできるのだ。特に苦労したことは、画質と映像パフォーマンスのバランスだという。
「画質をよくするとぎこちない動きになるし、動きをなめらかにすると画質を落とさざるを得なくなる。きれいな画質となめらかな動きの両立が課題ですね」映像技術が進み“楽しい”だけにとどまらない現在のVR。災害の多い日本で必要な「社会実装」VRは、人々の防災意識向上に大きな役割を果たすようになるだろう。

「地震列島VR」は、過去の大規模地震を体験できるアプリ。日本地図上にプロットされた震源地を選択すると、揺れの波形やP波とS波の広がりも含めた詳細なデータが表示される。地震体験映像は一時停止やスロー再生をすることで、地震発生時の危険なできごとをわかりやすく確認できる。

地震列島VR
地震列島VR