自動車工業学科 加藤寛

SUPER GT ROUND5 FUJI GT 300km RACE 観戦記

自動車工業学科 助教 加藤 寛/KATO Hiroshi

2015年2月ぐらいにアップされていると思います。
震災から4年が経とうとしています。内陸部への集団移転など徐々に復興が進んではいますが、まだまだ仮設住宅等で19万人の方が不自由なくらしを余儀なくされています。震災を忘れず、記憶を風化させないように。
少し前の話ですが、自動車短期大学は同じ自動車整備士資格を目指す専門学校に比べ長い夏休みがあり、教員もこの時期に有給休暇を使って長めの休みを頂き、以前この「AUT FUN」のも載せていますが、青春18きっぷの旅や富士登山など毎年色々なところへ行きましたが、今年は新潟での研究発表などもあり時間が取れない中、8月のFUJI SUPER GTのチケットを手に入れたので、その観戦記をお送りいたします。
SUPER GTは国内のモータースポーツの中では非常に人気があり、市販車モデルを改造したマシンでGT500とGT300の二つのクラスの混走で接触などもあり、また、2名のドライバーが交代で走るのでピット作業もあり、観客には見ごたえのあるレースです。それだけにチケットの入手が困難で今回は発売と同時にネットでチケットを入手できたので非常にラッキーでした。
チケットには色々なタイプがあり、一般の観戦券からファンシート、パドックパスやスペシャルチケットなど色々ありますが、今回はパドックパス+グリッド入場券を購入し、また、駐車場の心配もあり指定駐車券も購入しました。

予選日

富士スピードウェイに到着

パドックオープンが6:30ですから余裕を持って6:00ぐらいに着くように、自宅を3:00に出発して新東名を通り御殿場ICから一般道にて富士スピードウェイに到着しました。 当日は台風の接近で生憎の空模様でした。

駐車場

西ゲートから一方通行の外周路を通って、前売指定駐車場であるジムカーナコースに車を止めました。指定駐車場ですから急がなくても止められますが、場内でも良い場所は早く埋まります。

チケット引換所

メインスタンド裏のインフォメーションセンター前のチケット引き換え所でパスの引き換えを行います。このパスで色々な場所へ入場可能となります。

パドックへ

今回のチケットはピット屋上に入場可能で地下通路を通ってパドックに向かいます。もうすでに入場のための行列ができていました。屋上でもよい場所は早い者勝ちで、競争率は非常に高いです。

予選日のイベント

何とかレジャーシートと折りたたみ椅子で場所を確保し、公式練習前の公開車検、オープンピットへ向かいました。予選日のみに行われるイベントで早朝といったこともあり来場者も少なめで、 GTマシンを間近で見られるまたとないチャンスです。

左のマシンがエンジン出力500馬力以上のGT500クラス「MOTUL AUTECH GT-R」、右のマシンがエンジン出力300馬力以上のGT300クラス「グッドスマイル 初音ミク Z4」です。マシンは全て写真に収めましたが紹介までに。ぱっと見の外観上の違いはヘッドライトがGT500は白色、GT300が黄色です。

その他にレースオフィシャルによる救出訓練や、今年より採用されたカーボンブレーキ、各チームのトランスポーター、タイヤの準備などピットの前や後ろの様子を見ることができました。テレビ愛知で日曜日の23:30から放送されている「SUPER GT プラス」の取材も来ていました。

公式練習

9:00から合同の公式練習が始まり場所を移動して第一コーナーで観戦しました。FUJIのメインスタンド前のストレートはGT500クラスで今期300km/hを超えていて、 そこからの急ブレーキで第一コーナーを抜けて行きます。

その後、GT300の公式練習、GT500の公式練習、ヴィッツレースの予選と続きます。その間にメインスタンド裏のイベント広場に向かいました。

イベント広場では、各メーカーの展示車両やオフィシャルステージ、グッズの販売などがありましたが、右の写真は今年から採用されたGT500のモノコックの展示です。  
このモノコックはドイツのツーリングカー選手権「DTM」と共通で、それにより今期はレクサス(トヨタ)はSC430からRC Fに、ホンダはHSV-010からNSXコンセプトGTに、日産は引き続きGT-Rですが新レギュレーションに合わせ大幅に変更され、エンジンはスーパーフォーミュラと共通の2ℓ直列4気筒直噴ターボ(NSXのみハイブリットシステム)、その他に出力調整として燃料流量リストラクターを採用し、ウエイトハンデが50㎏を超えた場合に相当分をリストラクター径で調整を行い、エネルギー量の平滑化をすることでシリーズポイントの独走を防ぐなどがあり、白熱したバトルが見られます。

12:05から50分間のピットウォークの始まりです。普段は絶対入れないピットロードを開放して、ドライバーにサインをもらったり、チームグッズの配布やキャンギャルとの記念撮影など人気のイベントで、入場前は行列になっていました。左の写真はエネオスのエネゴリくんとレクサスのくま吉くん、右の写真はビバンダムこと合羽を着たミシュランマンです。

その後、GT-Rのプレステージカップ予選を挟んで、14:00からSUPER GT公式予選の始まりです。この公式予選はノックアウト方式と言ってQ1、Q2の2段階方式で、Q1ではそれぞれ15分間でタイムを競い、GT300 では上位13位まで、GT500 では上位8位までがQ2に進み、Q2ではそれぞれ12分間で最速タイムを出した車両がポールポジションとなります。Q1、Q2ではドライバーは別々でなければならないので、チームの戦略なども見ものです。メインスタンドにはファンシートがあり、応援するチームの車両が通過するたびに、ビックフラッグを振って応援します。ファンシートは専用チケットで、非売品のグッズ付きの指定席でこちらも人気のあるチケットです。予選の結果は公式サイトで確認を。ちなみにポールポジションはGT500が「KEIHIN NSX CONCEPT-GT」の塚越広大/金石年弘 組、GT300が「SUBARU BRZ R & D SPORT」の佐々木孝太/井口卓人 組でした。

白熱したSUPER GT公式予選も終り、次にヴィッツレースの決勝です。正式名称は「GAZOO Racing Netz Cup Vitz Race 2014 Kanto Serise Round3」で、ナンバー付きのトヨタ・ヴィッツのワンメイクレースで比較的レースに入門しやすく15年の歴史があり、今回が記念すべき300戦目となります。
右側の写真のゼッケン55号車はなんと、「本学短大卒業生」がエントリーしています。今後も応援して下さい。  
その後、中学生以下の子供たち対象のキッズウォークがあり、予選日は終了しました。

決勝日

予選日と同様にパドックオープンが6:30ですから、良い場所を確保するため早朝から宿を出て、ピットビルの屋上に場所を確保しました。決勝日は台風接近により大荒れの天気です。ピットビル屋上は屋根があり、この日のような天候の日は助かります。  
8:25からフェラーリをメインとしたチャレンジカップジャパンの走行講義1回目が始まりましたがコース上は川のようでした。

9:00からはSUPER GTフリー走行が始まりましたが、完全にウエットコンディションで、水しぶきで視界が悪く、ドライバーはほとんど前が見えていないのではないかといった中で走行していました。

9:40からはサーキットサファリといってGT車両と並走してバスの中からその走りを体感できる貴重なイベントです。こちらも前売抽選の人気の高いチケットです。

11:00から決勝日のピットウォークが始まりました。大荒れの天候でしたが、運よく小雨となり良かったのですが、観客数は半端なく入場までに長蛇の列となっていました。そんな中、片山右京監督の「GOODSMILE RACING & TeamUKYO」のピットにはドライバーの谷口信輝選手と片岡龍也選手、そしてF1ドライバー小林可夢偉選手が応援に来ていました。また、レース中の指令基地となるピットウォールスタンドの内部も見られました。

ピットウォークが終わり、チャレンジカップジャパンのスタート練習講義を挟んで、今回のチケットの一番の目玉企画、決勝スタート前のグリッド入場です。グリッドはメインスタンド前のホームストレートに予選により決定した順番にマシンが並ぶ隊列順位です。
普段は絶対に入れないスタート前のホームストレート上でマシンの最終チェック行う中、GTマシンはもとより、ドライバー、監督、メカニックやレースクイーンのスタート直前の華やかさと緊張感を間近で見られます。雨が降っていたり人ごみの中での撮影で、思うように撮れませんでしたが、右の写真にはARTA CR-Z GTのマシンの陰にARTAエグゼクティブ・アドバイザーのドリキンこと土屋圭市 氏の姿が写っていました。

12:40からのチャレンジカップジャパンスタート練習講義を挟み、15:00よりいよいよSUPER GT決勝のスタートです。スタートはローリングスタートと言って、 先導車に従ってGT500、GT300の順番に1周のフォーメーションラップの後、停止せずにそのまま加速し、スタートライン通過後から追い越しが可能で、スタンディングスタートに比べ接触のリスクは少ないですが、 ドライバーのスピードの強弱などの駆け引きがあり、独特の面白さがあります。

水煙を上げながら1コーナーへ(動画)

スタート時には路面はヘビーウェットで2周のセーフティーカーランを経て、3周目に水煙を上げながらスタートし、一コーナーへ突っ込んでいきます。 動画を撮りましたが水煙でほとんど見えません。(ブレブレですいません)

SUPER GTでは他のレースではあまり見られない、ブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、ミシュラン、ハンコック等、多数のメーカーがタイヤを供給していて、また、状況に応じてスリックタイヤやレインタイヤを選択するなど、そのタイヤ選択でタイムが大きく変わります。そのタイヤメーカーの違いもあり、順位が変動しながら最悪のコンディションの中、写真のように水煙を大きく上げながらメインスタンド前を走り抜けて行きます。

その後も雨脚は強くなる一方で、10周目にはセーフティーカーが導入され、ついには17周目に赤旗中断となり、ホームストレート上ではピットクルーがあわただしくGTマシンにカバーをつけていました。なかなか見られない光景でした。

ピットクルー(動画)

30分間の中断の後、天候が回復してきたのでレースは再開。このまま終わってしまうのかと思える状況でしたが、ドライバーやクルーの努力もあって観客としてはありがたいです。しかし、台風の接近で状況は刻々と変わり、各チーム頻繁にピットインを繰り返していました。ピット作業は給油やタイヤ交換がメインですが、レギュレーションで作業できる人数は最大7名、そのうち5名の同時作業が可能で、タイヤ交換は2名以内。ただし給油中はタイヤ交換禁止など細かい規定があります。ミク号のピット作業の動画です。

めまぐるしく天候は変化し、雨脚が弱くなりコース上の水もかなり掃けてくるとレインタイヤではタイムが伸びないのでインターミディタイヤ(浅溝レイン)に交換したり、そうかと思えば再び豪雨で、再びレインにと状況判断が非常に難しいなか周回は進み、残り周回数わずかなところで再びセーフティーカー導入で、セーフティーカー先導のままレース終了となる、ある意味貴重な瞬間に立ち会うことができました。

大荒れの天候で、抜きつ抜かれつの迫力のバトルとはいきませんでしたが、違った意味で楽しいレースを見ることができました。結果、GT500クラスは「ウイダーモデューロNSX CONCEPT-GT」の山本尚貴/フレデリック・マコヴィッキィ 組、GT300クラスは「SUBARU BRZ R&D SPORT」の佐々木孝太/井口卓人 組の優勝でした。  

SUPER GTは海外を含め年間8戦あり、2014年度の年間チャンピオンは、上記のオープンピットで車両紹介した、GT500クラス「MOTUL AUTECH GT-R」、GT300クラス「グッドスマイル 初音ミク Z4」となりました。現時点で2015年度、ミク号はZ4からSLSに変わるという情報があり、来季もかなり期待しています。  

本学は日本の真ん中あたりの愛知県蒲郡市と幸田町の境にあり、5月と8月の年2戦開催のFSW(FUJI SPEEDWAY)、8月の夏休み最後に開催のSUZUKA CIRCUITとどちらも高速で2,3時間の距離で、クルマ好きには良い環境の大学だと思います。